森のコンサートシリーズvol.9 オーケストラプロジェクト2021webプログラムノート

2021年4月8日19時開演(豊洲文化センターホール)

指揮:松本宗利音・管弦楽:ベートーヴェンプロジェクト2021室内管弦楽団

ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調 作品55『英雄』
第1楽章 Allegro con brio (18分)
第2楽章 Marcia funebre: Adagio assai (16分)
第3楽章 Scherzo: Allegro vivace (6分)
第4楽章 Finale: Allegro molto (11分)

休憩(15分)

ベートーヴェン 交響曲第7番 イ長調 作品92
第1楽章 Poco sostenuto – Vivace (13分)
第2楽章 Allegretto (8分)
第3楽章 Presto, assai meno presto (9分) 
第4楽章 Allegro con brio (10分)

 

1804年、32歳のベートーヴェンは「傑作の森」の皮切りとなる交響曲第3番「英雄」を作曲。「耳の聴こえなくなった世界にあっては、外部の邪魔な音からも解放されて、新しい形式を試みることができた。(中略)本質的な素材を自分の願望に合わせて、以前であれば考えもつかなかったような形式や構造に結びつけたり、さらにそれらを再構成したりすることが可能になったのである…(メイナード・ソロモン『ベートーヴェン』上巻より)」

1803年ころ

1789年にフランス革命がはじまって2年後、モーツァルトは亡くなった。ほぼ同時にベートヴェンはウィーンでピアニストとして活躍しはじめる。貴族などのパトロンに大きく依存する時代からの転換期にある中でベートヴェンのウィーンでの名声は確立している。1795年には最初のピアノ協奏曲を完成させ、自らの独奏で初演。1800年には「交響曲第1番」を完成・初演している。このころは服装にも気を使っていたし、プレイボーイだったのではという噂もある。

聴覚の異常を感知しはじめていた彼は1802年に遺書をしたためるところまでいく。
「『どうかもっと大きな声で話して下さい。私は耳が聞こえないのですから叫ぶようにしゃべってください』と頼むことはどうしてもできなかったのだ。音楽家の私にとっては他の人々よりもより一層完全でなければならない感覚であり、かっては私がこのうえない完全さをもっていた感覚、私の専門の音楽畑の人々でも極く僅かの人しか持っていないような完璧さで私が所有していたあの感覚を喪いつつあるということを告白することがどうして私にとってできたであろう・・・。」
もしかしたら今に伝わる人間嫌い、頑固者というイメージはあくまでも秘書(というより今でいう敏腕プロデューサー)を務めたシンドラーの采配だったのかもしれない。騒音に耳を傾ける代わりに自分の中の音楽にひたすら耳を傾け続け、交響曲第3番「英雄」以降の中期「傑作の森」にて様々なアイデアやイノベーション開花させていったという推測には説得力があるような気がする。

1811年より作曲がはじまった交響曲第7番は、第3番「英雄」から始まる「傑作の森」を経て、再び古典的な手法による交響曲に回帰した作品である。ワーグナーはこの曲を「舞踏の聖化 (Apotheose des Tanzes)」と絶賛した一方、ウェーバーは「ベートーヴェンは気が狂っているのではないか」との言葉を残している。

この曲は1814年のウィーン会議で世界首脳や要人たちに向けて演奏されている。ナポレオンの嵐から王政復古の方向に舵を取る国際会議の場でこの古典的でありながら斬新な交響曲が演奏されたのは何の因果だろうか。当時のウィーンではベートーヴェンが変わり者であることを知らない者はいなかったが、それでもほかのどんな作曲家よりも敬愛されており、葬儀には多数の参列者がいたという。

指揮:松本宗利音

1993年11月22日大阪府豊中市出身。相愛音楽教室、センチュリー・ユースオーケストラに所属し、音楽、特にヴァイオリンに親しみながら幼少期を過ごした松本宗利音は、京都堀川音楽高校を経て東京藝術大学音楽学部指揮科を卒業最優秀賞であるアカンサス賞を受賞して卒業。
指揮を尾高忠明、藏野雅彦、高関健、田中良和の各氏に、ヴァイオリンを澤和樹、曽我部千恵子両氏に師事し、藝大在学中にはダグラス・ボストック、パーヴォ・ヤルヴィ両氏のマスタークラスを受講。
2019年4月に札幌交響楽団指揮者に就任。2020年10月に、指揮研究員を務めて指揮者としての才能を花開かせる礎となった東京シティ・フィルの定期演奏会にデビュー。
これまでに東京シティ・フィル、札幌交響楽団はもちろん、新日本フィル、山形交響楽団、仙台フィル、群馬交響楽団、名古屋フィル、京都市交響楽団、大阪交響楽団、大阪フィル、読売日本交響楽団に客演。今後も東京交響楽団などとの共演が予定されています。これからの音楽界を担う期待の若手指揮者の一人であり、その瑞々しい感性から引き出される音楽から目と耳が離せない注目の存在です。

管弦楽:ベートーヴェンプロジェクト2021室内管弦楽団

【コンサートミストレス】 小泉百合香
【1st ヴァイオリン】平岡明子、荒巻美沙子、山中香林、杉山優子
【2nd ヴァイオリン】田口史織、片野可八子、松野木拓人、安藤美陽
【ヴィオラ】中村紀代子、川口さくら、高橋奨
【チェロ】谷口宏樹、薄井信介、大岩直季
【コントラバス】栗田涼子、多田菜穂
【フルート】兼間達郎、黒田聰
【オーボエ】田渕哲也、笹平幸那
【クラリネット】大藤豪一郎、坂本由美子
【ファゴット】磯崎政徳、榎戸絢子
【ホルン】小林祐治、伊東輝道、月原義行
【トランペット】佐藤秀徳、佐藤成美
【ティンパニー】秋場一宏


主催:ベートーヴェンプロジェクト2021
協賛:一般社団法人樂藝賓
制作:有限会社ロゴス・アイ・イー・エス

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お問い合わせ:info@mori-no-orchestra.jp